茶葉をポットに入れて、お湯を注ぎ込むだけでも、紅茶は摘出できます。

が、しかし。これが本当に美味しい紅茶かどうかといわれると話は別です。美味しい珈琲の入れ方があるように、美味しいビールの注ぎ方があるように、紅茶にも美味しい入れ方というものがあります。

美味しい紅茶を入れるのに大切なもののひとつが、《水》です。水は大きく振り分けると軟水と硬水に分かれます。水に含まれているカルシウムとマグネシウムをすべて炭酸カルシウムに換算した時に出る数値によってその硬度を表します。硬度が100未満のものが軟水、100〜300のものが中硬水、300以上のものが硬水となります。

紅茶に適しているのが、中硬水。紅茶は軟水だと色が出にくいのに成分は摘出されやすいので、渋みが強くなりやすいのが特徴です。ちなみに日本はほとんどの地域が軟水です。硬水は茶葉に含まれるタンニンが水のミネラルと結合しやすいため水色が濁りやすいのですが、味がまろやかに摘出できるのが特徴。ヨーロッパ圏はほとんど硬水です。

なので、この中間である中硬水が水色も綺麗で渋みの少ないまろやかな紅茶が入れられるのです。島国である英国は、ヨーロッパ圏でありながら中硬水だったため、これもまた紅茶が普及した理由のと考えられています。

紅茶を入れる時に硬度が高めのヨーロッパ圏のペットボトル水を使うと、まろやかな紅茶を入れることが出来ます。その場合はよく振って酸素を含むようにします。こうすることで茶葉が綺麗に開きます。

この茶葉を綺麗に開かせるためには、酸素がたっぷりと含まれたお湯と、茶葉が綺麗に開くタイプのティーポットを使用することが必須条件です。丸形のティーポットが理想で、紅茶の味、色、香りをバランス良く引き出してくれます。この茶葉を開かせるための仕組みを、紅茶界の専門用語ではジャンピングといいます。

水道水を使用する場合は、カルキ臭を抜くために浄水器や製水器を通したものを使います。蛇口から勢いよく注ぎ、酸素をいっぱい含ませます。

紅茶を入れる時は必ず、新鮮な水を使った沸かしたてのお湯を使います。やかんの中で霧のような細やかな気泡がいっぱいに立ち、その中から直径1㎝ほどの泡が5、6個上がり始めたら火を止めます。この時の温度は96〜98℃です。ここでいう沸かしたてのお湯の状態はこれです。沸かし過ぎたお湯には酸素が残らず、茶葉から美味しさを十分に引き出すことができません。

お湯や茶葉の量は一概に「これがベストな計量です!」というものはありません。茶葉の銘柄や個性などで違ってくるからです。ただ、英国では1人分をティーポットに入れる際、茶葉はティースプーン1杯+1杯が適量とされています。「One for me, One for pot」といって、人数+1杯という意味です。

しかしそれは中硬水の英国での話。日本の軟水を使って入れる時はもう少し控えめがいいです。ティースプーン山盛り1杯もしくは軽めに2杯。結局はさじ加減です。

また、ブラックティーで飲むのか、ミルクティーなのかスパイスティーなのかなど、飲み方でも加減は変わってきますから、いろいろ試してみて、ベストな紅茶を入れられるように練習するのも楽しいですよ。

水も、いろいろな産地のものを試してみたり、軟水と硬水を同じ条件で入れてみて、どんな違いがあるかを飲み比べすると、ベストな紅茶の状態も理解しやすくなるので、紅茶通を目指すなら、いろいろな条件で紅茶を入れて試飲してみて下さいね。