アイスティーの歴史はそう古くはありません。冷たい紅茶が発祥したのは英国ではなく米国でした。

1904年に米国・セントルイス万国博で、英国人のリチャード・ブレチンデンは紅茶を健康的で美味しい飲み物として紹介していました。ところが季節は夏。7月の猛暑の中、熱い紅茶は見向きもされなかったのです。一度は絶望感を覚えたものの、彼はふと思いつきます。氷を入れてはどうか…と。氷の塊を入れ、彼は叫びました。

「冷たい紅茶はいかがですか!」

途端、彼のもとに人々が群がり、冷たい紅茶は瞬く間に大人気になったのです。

しかし、発祥が米国だったことと、熱い紅茶を飲むことが正統だとする英国では、なかなか受け入れてもらえませんでした。

実は、灼熱のインドやスリランカでも冷たい紅茶を飲む習慣はありません。これはアイスティーを否定している訳でなく、単に氷を作るものがないから。氷は貴重な高価なもので、日常的に飲む紅茶に入れるにはあまりにも惜しいものなのです。

アイスティーは氷を入れるため、熱い紅茶と同じ入れ方だと時間経過とともに氷が溶けて薄くなります。これを解消するのが2度取りです。

先に気をつけたいのは、抽出する量です。1杯分で入れようとすると、アイスティー用の紅茶は美味しくできません。最低でもティースプーン軽く2杯分の茶葉に、熱湯280〜300ccで作ります。茶葉はスリランカ産のキャンディやディンブラなどのクセのないものがオススメ。

ティーポットに分量の茶葉を入れ、そこに勢いよく熱湯を注ぎ込み、10〜15分間放置してしっかりと蒸らします。時間が経ったら、茶葉を漉しながら口の広い容器へと紅茶を移します。別の容器の8分目まで氷をいれ、そこに漉した紅茶をさらに移して急冷させます。冷蔵庫でゆっくりと冷やしてしまうと、タンニンが結晶化して紅茶の水色が白っぽく濁ってしまうクリームダウンを起こしてしまうからです。

これが2度取りという方法です。アイスティーもさまざまなバリエーションを楽しめます。

【アイスティーの一例】

すべて1人分で紹介します。シュガーシロップはお好みで。

・アイスオレンジティー

夏の人気者です。オレンジの輪切りを2枚用意します。1枚をいちょう切りにしてグラスの中へ。その後に、クラッシュアイスをグラスの7分目まで入れ、2度取りのアイスティー120ccを注ぎます。オレンジの輪切りをグラスの縁に飾るか、グラスの中で浮かべて完成。

・アイスグレープフルーツミントティー

清涼感たっぷりのアイスティー。ミントはフレッシュ(4〜5枚用意)でもドライ(ひとつまみ)でもOK。飾り用を少し残し、残りは茶葉(ティースプーンに軽く1杯分)と一緒にティーポットに入れて2度取りのアイスティーを作ります。この場合、2人分を作るほうが美味しくできます。グレープフルーツの舟形切り2枚のうち、1枚は飾り用。もう1枚を3〜4等分してグラスの中へ。クラッシュアイスを7分目まで入れて、2度取りしたアイスティー120ccを注ぎます。グレープフルーツをグラスの縁に飾り、ミントを浮かべて完成。

・アイスレモンミルクティー

意外な組み合わせだけど、なぜかピッタリ。レモンの輪切りを2枚用意し、1枚をいちょう切りにしてグラスの中へ。クラッシュアイスを7分目まで入れ、2度取りしたアイスティー120ccを注ぎ、さらにミルクを30cc注いで撹拌。1㎝四方のレモンの皮2枚のうち、1枚は潰しながらグラスの縁によせて香り付けに、残りの1枚は飾り用に細切り。輪切りレモンをグラスの縁に飾り、ミルクティーにホイップクリームを浮かべ、その上にレモンの皮の細切りを飾って完成。